どこまで生き延びるのか!?コウガイビル
▼端午の節句であり、立夏だ!!
ということは、「あいつ」と出会って半年ちかく(地球が太陽のまわりを半周する時間だ!)経つことになる。
「あいつ」とはじめて出会ったのは、11月14日の朝だった。名前すら知らなかった。
それ以来、あいつは何も食べていない。
なんでだ。生き物が何も食べないなんてありえない!はず
▼昨日は、夕方から雨がふるかもしれないという予報だったので、ほんと久しぶりに子どもたちと一緒に「畑仕事」をした。やるまでがなかなかその気になれないが、やりはじめると畑仕事はいい!
実にいい!生き物たちと会話をしながらの労働。誰かがいっていたが、『農業を必修にせよ』と。納得だ!!
ふだん手入れをしていないものだがから、草むらができてしまっている。それも楽しい、いろんな生き物のすみかとなっているのだ。でも、とんでもないものに出くわしてしまった。「マムシ」だ。こればっかりは、まあいいかこれも楽し!とはいかない。慌てて、持っていた備中で退治した。三角を攻撃した。それは、死んでしまった。
近くの川に葬った。そして「あいつ」のことを思い出した。
▼昨日一日は「あいつ」の顔を見ていない。「あいつ」はいきているだろうか。すごく気になって、これを書いている。「あいつ」=コウガイビルに対して、なんとも愛おしい感情すらもってきている。
なんと言っても、半年ちかく一緒の空気を吸っているのだから。
「あいつ」は、いつまで生き延びるのだろう。!?
もう一度、若き日のC・ダーウィン(当時20代前半か)の観察記録を読んでみよう。
私は、南半球の各地で、陸生のプラナリアを十二種以上見た。ブァン ディーメンス ランド Van Dimen's Land
で得た若干の標本には、朽木を食わせて、約二ヶ月も生存をつづけさせた。一匹のプラナリアをだいたい相等しい大きさに横断すると、二週間のうちに双方とも完全な体となった。更に、片方が下面に開口を二つとも持ち、従って他の方は開口を一つも持たぬように切ってみた。施術後25日を経て、比較的完全に近かった方は、普通の標本と区別できぬまでになった。片方もその形がいちじるしく大きくなり、そして後端に近く柔らかい細胞集団のうちに透明な空間を生じ、その中には椀のような形の口の原基が明らかに認められた。しかし下面に裂口が開くには到らなかった。赤道に近づいたために、気温の上昇によって、すべての個体を殺すようなことがなかったならば、この最後の段階も構造を完成したに違いない。この実験はすでによく知られているところであるが、一方の個体の簡単な体の一端から、必須の器官がことごとく次ぎ次ぎに生ずるのを見るのは面白かった。プラナリア類を飼うのは極めてむずかしい。生活現象が終われば、一般に見る天然の変化の法則がここにも働いて、体は全体に柔らかくなり、液化する。そのはやさは、他に比べるものもないほどである。(「ピーグル号航海記 上」(岩波文庫)P54より)
これによれば、朽木のエサを与えて「二ヶ月も」と、ながく飼っているようにみている。
しかし、私の場合はちがう。なんもエサなど与えていないのである。それなのに半年も経とうとしているのである。
▼この不思議を解くために、いろいろ調べた結果。ちょっと奮発して
■『プラナリアの形態分化~基礎から遺伝子まで~』(手代木渉、渡辺憲二著、共立出版 1998.3.25)
を手に入れた。シロウトの私にしては、6500円は高価だ。
しかし、私には、それだけの価値のある本にみえてきた。
なにしろ、きっちりと一つの章「14.陸産プラナリア,コウガイビル種類・生態並びに形態分化」(P259~)があるのだから。
私の不思議に答えてくれる部分があった。
「14.9 飢餓と再生」(P275)にである。この章は牧野尚哉・白澤康子先生が書いておられる。
コウガイビルの飼育では給餌が大切な要素となるが、餌に対しての反応は同一種内でも異なり積極的に摂取するグループとそうでもないものとがある。また長期間の飢餓に耐え、もとの体重の1/100に減少しても生存し続けることができる。このような生理的変化が、顕著な再生能をもつ本動物の器官形成にどのような影響を及ぼすのか、頭部再生の有無、形成所要時間、極性との関連について、採集直後の体重を100として、もとの30~40%に減少したグループを飢餓個体として実験を行った。
なお、飢餓個体の設定は、採集された個体のうち、何としても餌を食べないものがあり、かなりの期間絶食にも耐えられるが、やがて死に至る。体重減少と生存期間の長短は一定ではないが、採取後減少の一途をたどる体重は、ある時点で平衡状態となり、これ以降急激に減少して死ぬものが多い。体重が安定をみせる状態を越えると個体は死を迎えることから、この安定期(もとの体重の30~40%)を飢餓状態と考えた。これらの飢餓グループと採集まもないものとを次の実験により比較した。(同書P276より)

それにしても、1/100の体重になっても生き続けるとは驚きである。
それでもやっぱり死ぬんだ!!これは間違いのないことなのだ。では、愛しのコウガイビルはいつ(・_・)......ン?
安定期はもう来ているのだろうか。
ここには、その「時間」のことが明確には書かれていない。もちろんわかっているのだろうが。
そこが知りたい。
C・ダーウインは、餌を与えても「2ヶ月も」と言った。
今は、このコウガイビルがいったいいつまで生き延びるのか。それが、知りたい。

それから、少なくとも十年以上の年月が経過した。この研究はどこまで進んだのだろう。
「再生」のメカニズムも解き明かされてきたのだろうか。
それもぜひ知りたいものである。
「あいつ」が生きているあいだにやりたいこといっぱいだ。
この連休中も生き続けていてくれることを願うばかりだ。
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